
実は発達に繋がる2歳児までのイタズラの力

イタズラというのは、大人から見た時に悪ふざけと思う行為ですが、概ね2歳児くらいまでは大人を困らせたいというわけではなく、自分の身体の機能を一生懸命使いこなせるようにしていくプロセスであり、好奇心を育んでいる状態でもあります。今回は2歳児くらいまでに表出する子どもたちの行動と対策について紹介します。
イタズラは成長の証でも困る、イタズラ対策の着眼点「物をたくさん投げてしまい危ないです」「クローゼットや引き戸など、どこでもを開けようとする」「棚にあがろうとする」「ロッカーの中に入り込もうとする」ついついやってしまうNG行為
イタズラは成長の証
引き出しを全部引っ張っている姿は、もうすでに握る、離す、手を使う感覚を習得できるようになっている成長の証。あるいは、カードのようなものを隙間に落としてみるのは、目と手の調和が取れていることを示します。これは、手を使えるだけではなくて、細かいところをよく見て、自分の目で見えたところと手の動きが一致するようにするための大事な運動です。
赤ちゃんが生まれたばかりの時は、ブランケットをちょっと触れるような手から、なんとなく握れるような手になり、その後に物を持つ手になりますが、この時はまだ物を離すことができません。持つ意識はあるけれども、離すことができるようになるのはこの次の段階です。散々物を持った後、徐々に離せるようになっていき、その後に指先の分裂した動きが始まる。指先が使えるようになれば、どうしても指先を使いたいという欲求が湧いてくる。
昨日と違う自分の体の使い方に興味を持つ → 繰り返す → 定着=機能化する。このサイクルによって、自分の世界が広がっていき、自分の体を思い通りに動かす喜びを得る。保育者、保護者は子どもをよく観察して、昨日できなかった動きができるようになったことを見つけるチャンスです。
でも困る、イタズラ対策の着眼点
昨日できなかったことが、できるようになった。でも、困る。どのように成長の喜びに変えていけばいいでしょうか。具体例を交えながら、4つの大事なステップを紹介します。
1. 子どもが「何に興味を持っているのか」をよく観察すること
2. 子どもの「やってみたい」が叶うために、大人が必要な環境を用意すること
3. ダメという否定語を極力避けること
4. 一貫性を持たせること
たとえ大人が困っていても、子どもには繰り返したいという本能があります。なので、どうしても開けられて困るところは大人が環境をコントロールしておく必要があります。お子さんを観察して、今この子がよく開ける動きをするなと思った時に、思い切って一つ開け放題の引き出しを置く。危ないものはお子さんの位置から離れるようにする。子どもを変えるのではなく、大人が自分を変えるのが一番の近道です。そして、安全で安心な状況の中で、子どもの「やってみたい」が叶うために、必要なものを用意しましょう。
「物をたくさん投げてしまい危ないです」
立って歩けるようになってくる一歳六か月ぐらいから二歳半ぐらいまでは物を爆発的に投げたくなる時期です。投げたいということであれば、バウンドせず、そして当たっても痛くなく、物を壊す心配のないようなものを用意してみましょう。例えば、運動会の紅白玉入れをするようなお手玉のようなもの。ここでの注意点として、子どもにとってボールは意外と扱いにくいので、子どもサイズであることと小さな手で握れる柔らかさであることに注意しましょう。
「クローゼットや引き戸など、どこでもを開けようとする」
自分の足腰を存分に使いたいという欲求を持ち始めている成長の証です。重たいものをコントロールできる環境を作るといいでしょう。例えば、ジャガイモやカボチャなどのお野菜が入っているような袋を引っ張ることができる環境を用意する。子どもでは持ち上げられない重さの袋を引っ張っていったりできると、すごく喜んだりします。意外と素敵なビジュアルのおもちゃよりも大人が普段使うものが好きなことも多いです。
「棚にあがろうとする」
棚にあがったり、ソファーや大人の椅子にも登ってみたい。ハイハイが少なくなり、歩行を始めると股関節を大きく使う運動をして、階段を登ろうと挑戦したり、腕と足を使いながら全身運動を始めます。「すごい、こんな力があるんだね。でもここだと頭ぶつけたら痛いから、あっちに登ろうか」と別に登れる環境を作ってあげるといいでしょう。
「ロッカーの中に入り込もうとする」
保育室であれば、二歳ぐらいから、ロッカーの中に入り込みたい子どもたちが出てくる。狭いところに入ることで、自分の体の大きさを感じながら、空間把握をできる力を養っています。ですが、ロッカーの中はバックや帽子をかけるフックもついていて、目に当たったらとても危険です。そういう時にはマットで迷路のようなものを作ったりできるといいでしょう。
ついついやってしまうNG行為
ダメっていう言葉は使わずに保育者の言葉の引き出しから、上手に伝えること。例えば、開けてほしいところをどんどん開けちゃうような時は「引っ張れたね。じゃあ今度は押してみようか」と言ってしまう。「どうもありがとう。ちゃんとしまったね。じゃあね」と言って、うまく切り替えができるように大人の声かけを工夫できるのがベストです。
また、子どもにとって、大人やその先生たちの笑顔が基準になることはとても多いです。ですから、やめてほしいものに対してニコニコしながらでは伝わりにくい。怒る必要は全くないが、真顔であること、その一貫性が大事なことです。例えばお家では「やらないよ」って言われるのにお外に出ると「もーっ」と笑ってママが言ってしまえば、「お外ではやっていいんだ」という捉え方になってしまう。ですから、叱るのではなくて、目を見て真剣に伝えることが大切です。

また、私たちの生活の中で、ひねるという動きは非常に少なくなっています。例えば、手を洗う時に蛇口をひねるよりも、手を出せば自動でお水が出てくる場面が増えました。ひねる事は手首を使えるようになるためにとても大事な動作です。転んだ時に手をついて自分の体を守る時やスプーンを持ってご飯を食べる時など、手首は重要な役割を果たします。例えば、化粧品クリームを入れるような小さな瓶をひねる子どもの姿は、そんな身体の基盤を作る動作になります。大人からイタズラに見えてしまう子どもの好奇心の芽を、保育者や保護者が「この子、今こういうことをしたいのかな」とちょっと見方を変えることによって、「困ったな」という思いから「こんなことができるようになった!」という喜びに変わるかもしれません。