
特別な日で終わらせない地域資源を活用した遊びの発展

エデュリーでは、なんとなく公園に⾏ったり、なんとなく消防署に⾏くことはない。それらの地域資源を⽣かした全ての活動に狙いを持って、保育をデザインしている。それは、⼦どもたちの⼀つ⼀つの経験が、点から線になることで、⼦どもの興味や学びが発展していくためである。どのように連続性を持った活動を展開しているのか、池⽥翔太園⻑に聞いた。
記事に登場する人

新卒で川崎市の認定こども園の立ち上げを経験した後、渋谷区の小規模園の立ち上げを主任・園長として従事。202年からポノ保育園の園長に就任。
地域資源と保育園の役割

「その地域の物理的な環境、あるいは地域にいる⼈たちとの⼈的な環境、どちらの地域資源もたくさんの魅⼒があります。
お散歩で使う公園だけでなく、消防署や警察署や駅など…目につくもの全てが物的な地域資源になると思うんです。それらを活⽤することで、保育園に通う⼦どもたちの『地元』になっていく場所にどんな⾯⽩さがあるのか、逆に危ない場所や交通ルールを学ぶきっかけになることも保育で地域資源を⽣かす良さだと思っています。
さらに、その地域に住んでる⼈たちと顔⾒知りになることで、⽣活の中で困った時に助けてもらえる関係を作れます。また、地域ならではの行事や伝統芸能をやっている⼈たちと触れ合うことによって、その地域の魅⼒的な伝統が未来にも繋がっていくことに繋がっていくと思うので、両側から⼦どもたちの経験が満たされていくことが⼀番良いのかなと思っています」
本物から盛り上がる

”午前はダイナミックに、午後はクリエイティブに”という1⽇の流れをベースにしているエデュリー。午前のダイナミックな活動では、⼦どものつぶやきから、消防署や郵便局など、⽇々本物に触れる体験を⾏う。その中でも印象に残っている体験を池⽥園⻑に聞いた。
「昨年、厚⽊市の『郷土芸能普及公演』に応募したら運よく当選したので、神楽体験を実施することができました。それがきっかけで⼦どもたちが踊りに興味を持ちはじめたんです。良い流れだと思ってすぐにプロダンサーにダンスを教えてもらうイベントを立てました。ダンス体験の当日は子ども達がリクエストした曲に合わせてオリジナルの振付を考えてきてもらい教えてもらいました。その二つのイベントがきっかけで夏頃には、運動会⾏事のために⼀緒に振り付けを子ども達と保育士が考えて、踊る時間を過ごすようになりました。
やはり、その道のプロと触れ合うことで得ることってとてつもない情報量だと思うんです。本物に触れて刺激を受けて大きな経験になっていく…その時のことはすごく印象に残ってますね。今でも踊ることが大好きな子は多くて、教えてもらった振付を踊る日もあります。その姿をみると本当に楽しい経験になったんだなと嬉しく思います」
⼀過性で終わらせない遊びの発展性

神楽の体験や消防署訪問など、⼦どもたちにとって特別な体験を「楽しかったね」だけでは終わらせない。そのために、保育⼠が⽇々⼦どもの興味をキャッチし、仕掛ける。だからこそ、⼦どもの遊びが発展していく。それは今でも続いている。
「去年の年⻑が卒園して、新しい年⻑に代替わりしたタイミングで、今年の年⻑はダンスを好きな⼦が多かったので、4⽉の当初から⾳楽をかけて踊る姿がありました。それを保育⼠がしっかりキャッチして、⾐装作りをしたり、その先⽣⾃体がもともとダンスをやってたので、『先⽣が⼩さい頃はこういうダンスやってたんだ』と動画を⾒せたりしていました。すると、⼦ども達から『みんなに披露したい』とリクエストが出てきたので、⾬の⽇に他の学年を招いてダンスの発表会の場を作りました。その日はすごく盛り上がりました。⼦どもたちがダンスの途中で綺麗に陣形移動をしたので、担任の先⽣に「あれは先生が教えたの?すごいね」と聞いたら、『何も教えていないです』と。⼦どもたち⾃⾝でダンスの隊形移動を考え始めて、⾃分たちで毎⽇練習していたということを聞いてさらに感動しました。
「今は夏祭りに向けて盆踊りを始めています。⼦ども達の吸収⼒が本当に凄くて、1・2回動画を⾒ただけで覚える⼦がいるんです。その⼦がリーダーになって他の子に教えてあげる。そうやってどんどん踊れる⼦が増えていくんですね。また、はっぴを作りたいと⾔って、針を使いながら⾃分の⾐装を作ったり、それを着て公園に⾏って盆踊りの練習をしたり、次々に遊びが広がってきています」
「⼦ども達のやりたいという気持ちを出来る限り可能にすると、ここまで⾃分達でやるようになるんだなっていうのが⾒れるんです。毎⽇何かしら変化があります。もちろん、保育⼠たちは⼤変なこともいっぱいあると思います。でも、やっぱりその中でも変化を楽しみながら毎⽇を過ごせているんじゃないかなと思ってます」
⼦どもを陰で⽀える先⽣の陰を⽀える
⼦どもたちの興味を拾い、それを地域も巻き込みながら広げていくには、保育⼠は頭を使うし、準備も必要になる。学びを点で終わらせないために、園⻑が意識しているのは職員の可能性をひろげることだ。⼦どもや職員の⽇々の変化を園⻑⾃⾝が楽しんでいるからこそ、園⻑⾃⾝の⾔葉も⾃然とポジティブになっていく。
「結局、保育を提供するのは僕ではなく、保育スタッフたちなので、⼦どもと関わっている中で拾い上げてきたことから実現できる環境をこっちも本気になって考えたり、⼯夫する。何でも無尽蔵に買えるわけではないので、そういう状況では、『じゃあ、ここは難しいから、こうしてみようか』と代案を立てたり…できないっていう答えをできる限りしないことはすごく意識してます。だから、⽬的意識を持って保育をするには、とてもいい環境だと思います」